相続・相続税対策の基本は下記の3つの対策を講じることです。
- 分割対策
- 節税対策
- 納税資金対策
この度は納税資金対策について、私が関与致しました案件をご紹介させていただきます。
<事例> 遺産の大部分が不動産である場合の相続税申告
- 遺言無し
- 遺産総額は遺産に係る基礎控除額を超えている(相続税の申告・納税義務がある)
- 生前より不動産等の管理を全て被相続人がおこなっており、相続人はその詳細を把握していない
- 相続人間は、良好な関係である
- 相続人は相続税を一括納税できる金融資産等を所有していない
<提案>
上記事例では、分割対策や節税対策も重要ではありますが、納税資金対策を早急に講じる必要があります。なぜなら、相続税は相続開始から10カ月以内に申告・納税をする必要があり、申告期限までに納税できない場合には延滞税が生じてしまうからです。
相続発生後の納税資金対策は、一般的に下記の方法が考えられます。
- 延納・物納制度を利用する
- 金融機関等から納税資金の借入をする
- 不動産を売却し現金化する
延納(期間は5年から20年)・物納(①)を行うには、一定の要件を満たし申請書を提出する必要があります。しかし延納には利子税がかかり、物納には財産の要件(担保権が設定されていたり、争いがあったりする不動産は物納不可)や、優先順位があります。事前に延納・物納が可能か否かを確認されることが望ましいでしょう。
また金融機関から借入をする場合(②)にも、融資条件を満たす必要があります。一般的には、利子税割合よりも金融機関の金利の方が低くなると思われますが、金融機関からの借入額総額で相続税を完納することが可能か否かを検討する必要があります。
不動産を売却する場合(③)には、申告期限までに決済すること、譲渡所得税が生じること(一定の要件を満たすことで相続税の取得費加算の特例制度を適用することができます。)を検討する必要があります。なおこの場合には、10カ月という申告期限内で不動産を現金化する必要があるため価格交渉で不利になり、売却価額が通常時よりも下がる可能性があります。さらに私の経験では、売却時に土地の境界で争いとなったり、土壌汚染が発覚したりと思わぬ事態に遭遇し、売却すること自体が困難となったケースもございます。相続発生後に不動産を売却されるとお考えの場合でも、事前から不動産の調査・査定等をされることを考えてみてはいかがでしょうか。
この度の事例では、被相続人が不動産に関する情報を生前から相続人に開示せず十分な対策を講じなかったことが、相続発生後に慌てることとなった原因ではないかと考えております。
普段から将来の相続を見据えご家族で話し合い、資産(不動産)の定期的な見直しをされることをお勧め致します。
*文章の作成上、法制度詳細の説明を割愛している部分がございます。予めご了承下さい。なお実際に運用・履行される場合には、税理士等の専門家にご相談願います。