源泉所得税調査

○源泉所得税の調査はどの様なものでしょうか?

税務調査の目的は、従業員への給与や社外への報酬について天引きした源泉所得税を確認することです。一般的には、法人税調査または所得税調査と同時に行われることが多いです。なお源泉所得税調査は、調査日程の後半に確認程度で行われるケースが多いです。しかし従業員数が多くまた様々な支払報酬がある会社の場合には源泉所得税の単独調査が行われます。

○調査はどの様に行われるのでしょうか。

従業員に支払った給与や賞与については、源泉徴収簿を基に会社保管が義務付けられている下記書類との突合せを行うことで確認します。

  • 扶養控除等申告書
  • 保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書
  • 住宅借入金等特別控除申告書

一方、報酬については契約書等を基に、請求書・領収書等との突合せを行うことで適正に処理されているか確認します。

○従業員給与に関する調査で問題となることはどの様なことでしょうか。

税務調査では、主に年末調整の結果を基に行われます。

一般的にはまず、扶養控除等申告書の記載内容について、生年月日や扶養親族の状況の確認、人的控除(配偶者控除や扶養控除・障碍者控除・寡婦控除など)等の適用が適正になされているかの確認が行われます。次に保険料控除申告書を基に社会保険料、生命保険料、地震保険料について添付が義務付けられている控除証明書の有無、支払金額や控除額が確認されます。最後に住宅借入金等特別控除申告書について、借入金残高証明書等の有無、支払金額や控除額を確認します。

よく問題となるのは、配偶者控除や扶養控除・障碍者控除・寡婦控除等の人的控除の取り扱いについてです。配偶者の所得、障害の程度、離婚か死別かにより控除額は変わりますので、重点的に聞き取り調査が行われます。

○外注費と給与を混同しているのですが、何か問題となりますか?

源泉所得税の視点から見ますと、給与には源泉徴収が必要となりますが、外注費には一般的には源泉徴収は必要ありません。しかし外注費と給与を選択可能なものでなく、取引の実態によりどちらに該当するか決定されるものです。外注費か給与かの判断基準として、

  • その契約に係る役務提供の内容が他人と代替可能なものか
  • 業務を行うにあたり事業者の指揮監督を受けるか否か
  • 商品に対する責任関係の所在がどこにあるのか(個人か会社か)
  • 役務提供の用具等は貸与されているか否か

があります。実際には、業務委託契約書等により個別に判断し源泉所得税が適正に処理されているかを確認します。

○年間103万円以内のアルバイトしか雇用していないので、源泉所得税の調査は不要だと思うのですが…。

年間の支払給与額が少ない従業員であっても、扶養控除等申告書の提出・保管を怠っていれば、税務調査で源泉所得税徴収漏れを指摘されることになります。

源泉所得税を徴収する場合、扶養控除等申告書が提出されていれば甲欄、提出されていなければ乙欄で計算されます。したがって、年間の支払給与額が少ない場合でも、扶養控除等申告書の提出がなければ乙欄で源泉所得税が計算されることになりますから、一般的に給与額の3%程度の源泉徴収が必要となります。よって、アルバイト雇用のみであっても源泉所得税調査は必要となる場合があります。