科目別税務調査のポイント

〇科目別に税務調査のポイントとその対応のポイントを教えてください【所得税・法人税・消費税】

税務調査でよく指摘される事項とその対応の要点は下記のとおりとなります。

【現金】

〇調査のポイント

  • 現金出納帳の残高と実際の残高が一致しているか。

〇対応のポイント

  • 調査日の当日または前日の現金出納帳の残高と当日の実際の残高を突合する。

【棚卸資産】

〇調査ポイント

  • 棚卸資産の評価方法の届出書が提出されているか。
  • 上記届出書による評価方法により評価されているか(上記届出書を提出されていない場合には、法定評価方法である最終仕入原価法による原価法となります)。
  • 棚卸資産の数量の確認はなされているか。
  • 評価損が計上されている場合には、その評価が適正か否か。

〇対応のポイント

  • 棚卸資産の数量の基礎となる原始記録を整備する
  • 仕掛品等については、その進捗状況を説明できる資料を保存する
  • 評価の基準を説明できるようにしておく

【貸付金】

〇調査のポイント

  • 親族等に対する貸付金はないか。
  • 金銭消費貸借契約書の内容は適正であるか。
  • 上記契約書通りに元金及び利息が返済されているか。

〇対応のポイント

  • 借主に貸付金額の返済能力があることを示す。
  • 約定金利が適正なものであることを示す。
  • 貸付金の使途を説明できるようにしておく。

【短期前払費用】

〇調査のポイント

  • 役務の提供が1年を超えていないか
  • 短期前払費用を支出時に経費計上されている場合には、継続してその支出時に経費計上されているか。

〇対応のポイント

  • 契約書等により役務の提供の内容及びその対象期間を説明できるようにしておく。

【減価償却資産】

〇調査のポイント

  • 事業の用に供していない資産について減価償却費を計上していないか。
  • 稼働していない資産について減価償却費を計上していないか。
  • 一括購入した土地、建物について適正に取得価額を区分しているか。
  • 少額減価償却資産の取得価額の判定を1組ごとにしているか。

〇対応のポイント

  • 資産の購入日と資産の使用状況を確認する。
  • 固定資産の除却損が適正に計上されているか確認する。
  • 消耗品費、修繕費等として計上した少額減価償却資産を整備する。

【借地権】

〇調査のポイント

  • 借地権設定時の権利金の支払はあるか。
  • 地代は適正額か。

〇対応のポイント

  • 契約書、不動産の登記簿謄本等の資料を整備しておく。
  • 権利金の支払の有無、地代の計算方法及び土地の無償返還に関する届出書の提出の有無を確認しておく。

【保証金・積立金】

〇調査のポイント

  • 敷金、預託金、差入保証金等については、契約書通りの適切な処理がされているか。
  • 保険積立金については、保険証券等により適切に資産計上がなされているか。

〇対応のポイント

  • 契約書、請求書等を整備する。
  • 保証金のうち償却部分の処理について適切に処理がなされているか確認をする(保証金のうち返還不要部分は収益として処理する必要があります)。
  • 保証金等に対する利息の確認をする。
  • 契約終了に伴う敷金等の返還処理が適切になされているか確認をする。
  • 保険契約ごとに資産計上すべきものとそうでないものを区分する。
  • 保険の満期または解約に際し、積立金が適切に取り崩されているか確認をする。

【買掛金・未払金・借入金】

〇調査のポイント

  • 買掛金について取引先との残高は一致するか。
  • 親族からの未払金、借入金が生じた理由は何か。
  • 借入返済計画に基づいて正しく処理されているか。

〇対応のポイント

  • 仕入関係資料を整備し、買掛金の残高を確認する。
  • 金銭授受に関する証拠資料や金銭消費貸借契約書を整備する。
  • 金融機関が作成された借入金返済明細表の内容を確認する。

【資本】

〇調査のポイント

  • 株主によって資本金が実際に支払われているか。

〇対応のポイント

  • 株主名簿を確認する。
  • 株主総会議事録及び取締役会議事録を保管しておく。

【売上高】

〇調査のポイント

  • 売上高は収益計上基準の要件を満たしているか。
  • 収益計上基準は継続して適用されているか。

〇対応のポイント

  • 請求書、領収書等を整備し、取引の内容を確認する。

【売上原価】

〇調査のポイント

  • 棚卸資産の評価方法は正しいか。
  • 実地棚卸をした日はいつか。
  • 実地棚卸に集計漏れはないか。

〇対応のポイント

  • 棚卸表の内容を確認する
  • 預け在庫なども棚卸表に記載されているか確認をする

【給与等】

〇調査のポイント

  • 従業員は存在しているか。
  • 源泉徴収は適正になされているか。
  • 給与規程、賞与規程、退職金規定は適正に定められているか。
  • 給与額等の支給額は適正であるか。

〇対応のポイント

  • 従業員名簿を確認する。
  • タイムカードを整理する。
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を確認する
  • 退職金を支給した場合には、退職所得の受給に関する申告書を確認する
  • 就業規則、給与規程、賞与規程、退職金規程を整備する。
  • 親族等に対する給与額が不相当に高額となっていないか検討する(親族等の業務内容を確認する)。
  • 支給した退職金の算定根拠を明らかにしておく。

【現物給与】

〇調査のポイント

  • 使用者が負担する食事代は非課税限度額を超えていないか。
  • 社宅について徴収している賃貸料が通常の賃貸料の50%相当額以上であるか。
  • 通勤手当は非課税限度額を超えて支給していないか。
  • 従業員レクリエーション旅行は、旅行の参加人員が全従業員数の50%以上であるか。

〇対応のポイント

  • 食事代の総額を説明できるようにしておく。
  • 社宅に係る通常の賃貸料の算出過程を明らかにしておく。
  • 各従業員の適正な交通費(定期券代等)を明示できるようにしておく。
  • 従業員レクリエーション旅行の参加者一覧表を作成しておく。

【福利厚生費】

〇調査のポイント

  • 特定の者だけが利用している福利厚生施設はないか。
  • 福利厚生費の勘定科目の中に税務上交際費に該当するものはないか。

〇対応のポイント

  • 福利厚生施設の利用管理簿を確認する。
  • 福利厚生費勘定の内容を確認する。

【旅費交通費】

〇調査のポイント

  • 業務上必要な旅費であるか。
  • 旅費の金額は妥当なものであるか。

〇対応のポイント

  • 出張記録等によりその旅費の内容を確認する。
  • 旅費規程を確認する。

【交際費】

〇調査のポイント

  • 交際費の中に寄付金に該当するものはないか。
  • 交際費の中に役員報酬や従業員給与に該当するものはないか。

〇対応のポイント

  • 支払報告書、参加者名簿等により支払内容を確認する。
  • 他の科目との相違を理解しておく。
    • *広告宣伝費 … カレンダー、手帳その他これらに類する物品を不特定多数の者に贈与するために通常要する費用(主として広告宣伝を意図する物品でその価額が少額であるもの)等
    • *寄付金 ・・・ 事業に直接関係のない者に対する金銭の贈与等
    • *会議費 ・・・ 会議、打合せ等における飲食費で通常会議を行う場所で通常供与される昼食程度の費用等

【地代家賃】

〇調査のポイント

  • 賃貸契約書の内容と同一の処理がなされているか。
  • 権利金に関する処理が適切になされているか。
  • 賃貸料が妥当な金額であるか(時価と比べて著しい乖離はないか)。

〇対応のポイント

  • 賃貸借契約書の内容を確認する。
  • 権利金の支払の有無、相当の地代の支払の有無、土地の無償返還に関する届出書の提出の有無等を確認する。
  • 賃貸料の相場を確認する。

【修繕費】

〇調査のポイント

  • 修繕費以外の勘定科目の中に修繕費に該当するものはないか。
  • 修繕費の中に資本的支出に該当するものはないか。

〇対応のポイント

  • 見積書、請求書等により工事の内容を説明できるようにしておく。

【減価償却費】

〇調査のポイント

  • 固定資産台帳が整備されているか。
  • 取得日、取得価額、償却方法は正しいか。
  • 中古資産の耐用年数は適正に算出されているか。
  • 少額減価償却資産、一括償却資産の処理方法は正しいか。

〇対応のポイント

  • 固定資産台帳を基に実際の固定資産の有無を確認する。
  • 見積書・領収書等を整備し、取得日・取得価額・耐用年数等を確認する。
  • 確定申告書を確認し、少額減価償却資産や一括償却資産の内容を確認する。

【貸倒損失】

〇調査のポイント

  • 貸倒損失の計上時期は正しいか。
  • 貸倒損失の計上要件を満たしているか。

〇対応のポイント

  • 下記資料を整備する。
    • *法律等による貸倒れの場合 … 更生計画書、再生計画案、裁判所から文書、債権者集会議事録、債務免除通知書等
    • *事実上の貸倒れの場合 ・・・ 債務者の資産状況・支払能力等を示すもの、担保物・保証人の有無及びその状況が分かるもの
    • *形式上の貸倒れの場合 ・・・ 得意先元帳、請求書、取立費用の見積書等

【リース取引】

〇調査のポイント

  • リース取引に該当するものか。
  • 減価償却の方法は正しいか。

〇対応のポイント

  • リース契約書を確認する。
  • リース資産の購入価額が分かるものを整備する。

【その他の損益】

〇調査のポイント

  • 損益の計上時期は正しいか。
  • 譲渡価額は適正な金額か。

〇対応のポイント

  • 譲渡契約書、領収書等を確認する。
  • 不動産売買である場合には、鑑定書・公示価格・路線価等の価額の妥当性を示す資料を整備する。

【事業所得】

〇調査のポイント

  • 家事関連費はあるか。
  • 生計一親族に支払った地代家賃が必要経費に算入されていないか。
  • 事業専従者控除(白色申告者の場合)、青色事業専従者給与(青色申告者の場合)は適正に処理されているか。
  • 推計課税が必要な場合には、事業者の生活費はどのくらいか。

〇対応のポイント

  • 家事関連費について、業務に関連性があることを説明できる資料を整備する。
  • 親族に対する支出の内容を確認する。
    • *生計一親族に対する地代家賃・借入金利子は、必要経費に算入できません。しかし、その生計一親族が必要経費となる固定資産税、減価償却費、借入金利子等を支払った場合には、その事業者の必要経費となります。
  • 事業専従者の業務内容を確認する。
    • *その年を通じて6月を超える期間、事業者の経営する事業に専ら従事していることが必要となります。
  • 青色事業専従者給与に関する届出書から支給額を確認する。

【不動産所得】

〇調査のポイント

  • 不動産の所有者が単なる名義人ではないか。
  • 不動産所得について、その所有者以外の者の所得となっていないか。
  • 賃貸収入の計上時期は正しいか。
  • 更新料、共益費等も収入に含めているか。
  • 保証金償却を適切に収入に含めているか。
  • 修繕費は正しく計上されているか(資本的支出を修繕費として計上していないか)。
  • 家事関連費の按分割合は妥当か。
  • 青色専従者給与額は適正か。

〇対応のポイント

  • 不動産の登記簿謄本等より所有者を確認する。
  • 確定申告書より不動産所得の内容を確認する。
  • 賃貸借契約書を整備し、賃貸料の取り決めや保証金の取扱いを確認する。
  • 修繕費の見積書、請求書の内容を確認する。
  • 事業供用割合の算定根拠を説明できるようにしておく。
  • 青色事業専従者給与に関する届出書の内容を確認する。
  • 青色事業専従者の業務内容を確認する。

【譲渡所得】

〇調査のポイント

  • 譲渡契約が適正になされているか(譲渡価額は通常の取引価額と著しく乖離していないか)。
  • 所得計算は正しいか(譲渡費用等に不適切なものが含まれていないか)。

〇対応のポイント

  • 譲渡契約日、資産引渡し日、譲渡代金の受領日、譲渡価額の妥当性、収入印紙貼付の有無等の確認を譲渡契約書及び領収書等から行う。
  • 租税特別措置法の特例の適用を受けている場合には、資産の利用状況や各種証明書を確認する。

【消費税】

〇調査のポイント

  • 基準期間の課税売上高が適正に算出されているか。
  • 免税事業者である場合、特定期間の課税売上高が正確に算出されているか。
  • 新設法人又は特定新規設立法人に該当するか。
  • 仕入税額控除の要件を満たしているか。
  • 簡易課税制度を選択されている場合には、事業区分が正しくなされているか。

〇対応のポイント

  • 基準期間における確定申告書を確認する。
  • 請求書、領収書等より課税売上高に該当するか確認をする。
  • 株主名簿を整備し、資本金額や出資関係を確認する。
  • 仕入税額控除に係る帳簿および請求書等の記載要件について確認する。
    • *仕入税額控除の適用を受けるためには、課税仕入れの事実を記載した帳簿の保存に加え、請求書、領収書、納品書等の取引の事実を証する書類の保存が必要となります。また、仕入税額控除の要件となる帳簿への主な記載事項は下記のとおりです。
      • 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
      • 課税仕入れを行った年月日
      • 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
      • 課税仕入れに係る支払対価の額
  • 簡易課税制度を選択されている場合には、事業区分の判定根拠資料を整備する。