相続・相続税対策の基本は下記の3つの対策を講じることです。
- 分割対策
- 節税対策
- 納税資金対策
この度は節税対策について、私が関与致しました案件をご紹介させていただきます。
<事例> 金融資産が財産の大部分を占める場合の相続税対策
- 家族構成は夫、妻、子2人である
- 子は既に結婚しており、孫も計2人いる
- 養子縁組はしていない
- 家族内は比較的円満な関係であり、遺言作成は不要であるとのこと
<提案>
上記事例では、3つの対策のうち節税対策に重点が置かれます。なぜなら家族間は現在のところ円満な関係であるため分割対策を検討する重要性は低く、また金融資産が財産の大部分を占めるため納税資金対策もその必要性が低いと考えられるためです。
節税対策を検討する場合には、主に下記事項を検討する必要があります。
- 生前贈与
- 小規模宅地の特例の有効的活用の検討
- 広大地等土地評価の検討
- 不動産への資産の組換え
- 養子縁組
- 生命保険の活用 等
上記のうち不動産や相続人に関することは誠に勝手ながら割愛させていただき、この度は生前贈与について注意すべき事項を説明させていただきます。税制の観点から生前贈与には下記の種類があります。
① 暦年贈与
② 相続時精算課税
③ 配偶者控除
④ 住宅取得等資金の贈与
⑤ 結婚・子育て資金の一括贈与
⑥ 教育資金の一括贈与
上記生前贈与を計画的に実施し、贈与税の軽減を図りながら相続税の節税を行うことが有効です。なお手続き面では、②~④は申告が必要となり、⑤・⑥は金融機関等を介して申告する必要があります。そのため②~⑥の贈与は事後的に問題となることは少ないのですが、①については比較的容易に行えるため税務上注意が必要です。
具体的には暦年贈与を行うにあたり、年間110万円までの贈与には申告義務がないため、当該贈与に関係する書面の作成等を失念してしまうことが問題として挙げられます。その結果、事後的に行われる税務調査で本当に贈与が行われたか否かで争点となることがあります。実際には、贈与契約書の有無、贈与対象となった現預金の管理者の確認、被相続人の財産の管理状況等の確認がされ、贈与が行われたか否かを検討します。
そこで、暦年贈与に係る相続税調査で後に否認されないために、贈与をされる場合には次のことに気を付けましょう。
- 贈与契約書を作成する(贈与者・受贈者の意思表示をする)
- もらった人が自由に使える状態にする(受贈者が印鑑・通帳を管理し、運用する。)
- 贈与税はもらった人が払う(年間110万円を超える贈与の場合には申告をする。)
節税対策のための贈与をおこなっても事後的に否認されれば、効果的な節税対策とは言えません。
我流の節税対策ではなく法律に則した手続きを行い、計画的に相続・相続税対策を実施しましょう。
*文章の作成上、法制度詳細の説明を割愛している部分がございます。予めご了承下さい。なお実際に運用・履行される場合には、税理士等の専門家にご相談願います。