相続税税務調査で指摘の多い「名義預金」とは?(名義預金と判定されないための対策)

ここでは、相続においてどの様な現預金が問題となるのか、また問題とならないためにはどの様な対策を講じればよいのかをご説明させていただきます。(なお下記はあくまで一例ですので、実際の取扱いは税理士にご相談願います。)

 

Q1 相続で問題となる預金には、どのようなものがありますか?

  • 相続直前(又は相続直後)に引き出された預金
  • 夫婦共有のお金(生活費)
  • 子や孫へ贈与したお金(名義預金)

などがあり、本来誰の財産であるかが議論されることになります。

上記のようなお金の取扱いは、後々に問題となることに気づかずに行われることが多いように思います。

 

相続直前(又は相続直後)に引き出された預金

預金は原則としてその名義人(本人)しか引き出すことはできません。しかし名義人が認知症等である場合には現実には親族が管理している場合がよくあるように思います。したがって相続直前(又は直後)に医療費の支払いや葬儀費用等の備えとして名義人以外の方が引き出すことが多いと思われます。

 

夫婦共有のお金(生活費)

夫婦の共有物という考え方があってもやむを得ないと思いますが、それは税の考え方において一般的ではありません。そこにお金があれば、ご本人で稼いだか、配偶者から贈与を受けたかと考えるのが一般的で、その各々の行為に納税義務(所得税・贈与税)が生じます。

 

子や孫へ贈与したお金(名義預金)

子や孫への贈与は節税対策として有効であったとしても、教育上は必ずしも望ましくないという考え方が往々にしてあります。それ故本人には伝えない、いわゆる有効でない贈与をされる方が多くいらっしゃいます。

 

これらに共通して言えることは、所有者と管理者が異なるということです。

それ故に課税上や手続上で問題が生じ、相続時に議論となる場合があります。

 

Q2 相続直前に引き出された預金はどのように取り扱われるのでしょうか?

相続財産として相続税課税されます

被相続人の医療費や生活費等に使用された事実を証明できない場合には、手許現金として課税対象財産となります

不当利得返還請求を受ける場合があります

委任の範囲を超えて使用した場合には、被相続人に対して返還する必要が生じ、相続財産となります

原則として被相続人が費消した金銭なので、その使途の説明を相続人に求められても相続人には分からないという事態もあると思います。

しかし、費消した事実がなければ手許にその現金が残っているものとして(相続財産として)申告し納税する必要があります。

実際には資産の取得、債務の返済、治療費の負担等を考慮して手許に現金が残っているか否かを判断する場合が多いと思われます。

なお仮に相続人が個人的に費消したものであれば、その相続人は被相続人に対し債務が生じ、その財産の相続人に対し返還する義務を負います。

不当な課税を受けないためには、第三者に客観的に証明できる資料が必要であると思われます。

 

Q3 相続時に夫婦共有のお金はどのように取り扱われるのでしょうか?

 ・妻が専業主婦である場合

   被相続人(夫)の相続財産として扱われる可能性があります

 ・夫婦が共働きの場合

   収入比率などの合理的な方法により按分した金額を被相続人(夫)の相続財産として扱う場合があります

 

原則として生前贈与されたという証拠がない限り夫の財産として取り扱われます。

また預金の元手が複数人の収入から構成されている場合、被相続人に帰属する額を合理的な方法で区分し算出する必要があります。

その方法は収入金額、勤続期間、生活費等を考慮したうえで決定すべきであると思われます。

 

ところで、

 

へそくり(生活余剰金、夫から預かった生活費のうちの残ったお金)は、税務上相続財産として取り扱われるのでしょうか

 

夫婦において夫の収入で生活を賄い、余剰金を妻名義の預金として貯金しておくという状況は、公にはされないものの想像に難しくないと思います。

もともと夫のものなので夫の財産でしょうか。それとも、妻の努力によって築き上げられたものなので妻の財産でしょうか。

税務上は客観的に夫から妻に生前贈与された証拠がない限り、夫に帰属するものとして取り扱われます。

その理由は、次の通りです。

  • 夫の財産を妻名義で保有することも現実として珍しくないので、名義だけではその所有者を判断することはできない。
  • また管理だけをもって妻の財産ということはできない。
  • いわゆる生活費は夫婦共同生活の基金であって、妻固有の財産とは言えない。
  • 「生活費で残ったお金は好きに使っていい。」という口頭の契約でも、その言動だけをもって即座に妻固有の財産となるものではない。

以上より、へそくり(生活余剰金)は夫(被相続人)の財産として相続税課税の対象として取り扱われる場合があります。

 

Q4 名義預金に該当するか否かは、どのように判断されるのでしょうか?

    財産の名義に関わらず、主に

     ① 財産の資金源は誰のものか

     ② 生前贈与がされたか

     ③ 誰が管理・運用をしていたか

     ④ その利益を誰が享受していたか

    により判断されます

 

名義預金の判定はその名義ではなく、実質的に被相続人の財産として認められるか否かによって判断されます。

具体的には、①資金源、②生前贈与の有無、③管理者、④利益の享受という観点から総合的に判断されます。

 

① 資金源

被相続人が拠出した資金である場合、贈与の事実があれば名義人のものとなりますが、贈与の事実がなければ実質的に被相続人に帰属するものとなります。

 

② 生前贈与の有無

贈与を受けていれば名義人に帰属しますが、贈与が成立していなければ被相続人に帰属するものと判断されます。

 

③ 管理者

名義人の財産であるならば、その名義人がその財産を管理・運用する必要があります。

 

④ 利益の享受

預金であれば利息、株式であれば配当、不動産であれば賃料といった財産から生じる利益をその名義人が享受している必要があります。

 

上記の観点から実質的に被相続人に帰属するものと判断されれば、それはいわゆる名義預金として取り扱われます。

 

Q5 預金の取扱いで問題とならないためには、どのようにしたらよいのでしょうか?

 誰のお金か明確に分かるように、普段から客観的な証拠を残すようにしておきましょう

 ① 贈与契約書、贈与税申告書、公正証書を作成しよう

 ② 履歴の分かる通帳、領収証、メモ等を保存しよう

 ③ 信頼できる専門家に相談しよう

 

争点になるのは、有効な贈与をしたか否かという点だと思われます。

贈与契約は原則として口頭であっても成立しますが、その事実があったことを客観的に証明することは難しいと思われます。

そこで、

  • 贈与契約書を作成し、贈与者・受贈者が署名押印する。
  • 資金移動の記録は通帳等で残す。
  • 受贈者が自らのものとして管理・運用する。

 

ことが重要となります。

なお、贈与契約書、贈与税申告書、公正証書を作成したといえども租税回避のために作成されたものは根拠資料(証拠)とはなりません。その意味で、上記資料を作成したからと言って万全の対策を講じたことにはならないことを付け加えさせていただきます。

動画でも解説しておりますので、ご確認ください。

 

Q6 預金の取扱いで問題とならない効果的な生前贈与や相続税対策には、どのようなものがあるのでしょうか?

代表的なものとして下記のものがあります

   ・正しい生前贈与を行う

     ① 贈与契約書を作成する

     ② 資金移動の証拠を残しておく

     ③ 受贈者が通帳・印鑑を管理・運用しておく

   ・納税資金・葬儀費用の準備を始める

   ・遺言を作成し、遺言執行人を選任する

   ・信託・生命保険等を賢く活用する

   ・財産の把握・確認

 

まず、贈与が成立したか否かで議論になることが多いことから、正しい生前贈与を行うことが重要な対策となります。

なお意思能力がはっきりされていない方による贈与の場合は、医師の診断書や介護職員の申述等を証拠として準備するようにしておく必要があると思われます。

次に預金引出の理由が、資金の早期利用のためであるならば、事前に必要なお金(費用や税金)を試算し、備え、そして使用できる状態にしておくことが対策となります。

例えば、

  • 納税資金や葬儀費用など予め試算し、準備しておく
  • 遺言を作成し、遺言執行人を選任することで、相続発生後滞りなく相続手続きが行われるように配慮しておく
  • 金銭信託・遺言信託・遺言代用信託を活用する
  • 生命保険のメリット(非課税枠、保険金の早期確保等)を理解し、生命保険の活用を検討する

最後に現在の財産を把握し確認をすることで、後々問題となりそうな財産があれば早期に見直し、然るべき対処をしておくことが望ましいと思われます。

 

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