相続間際の預金引出し。調査で指摘を受けないためには?

相続対策・相続税対策だけでなく相続手続き等も実施していくなかで、下記場合における税務上の取扱いについて注意すべき一例を簡単に説明させていただきます。

  • 贈与時
  • 相続時

この度は、相続時についてお話をさせていただきます。

事例

父が亡くなる直前に、長男が葬儀費用の支払いのための資金として100万円を父名義の預金から引き出した。

その後長男は実際にその資金を葬儀費用として支払い、現在は手許に残っていない。

それ故に相続税申告書において当資金を課税対象財産として計上していない。

 

提案

人がお亡くなりになると様々な手続きが必要となります。そしてその手続きを行うにあたり一定の費用が生じます。また相続人が複数である場合には、葬儀費用等の負担を誰がされるのかで議論となる場合があります。

それ故、一般的に相続人は当費用を自らの財産からではなく、お亡くなりなった方の遺産から負担しようと考えることが多いようです。しかしお亡くなりになるとその方名義の預金口座はすぐに凍結されてしまい、現金の引出は不可能となります。

そこで、この凍結された遺産を自らの財産として使用するには、名義変更等の諸手続きを行う必要があります。なお、この名義変更に係る期間は遺言の有無や金融商品の内容により異なりますが、概ね1か月程度の時間を要すものと見込まれます。

これらの理由により、事例の様に名義人ではない方が事前に将来のために必要な資金を引出してしまうことが実務上多々見受けられるようです。

 

この様な場合には、引き出した現金(被相続人が自ら費消したものを除く。)は、手許に残っていなくても相続財産として申告する必要があります。

もし申告されない場合には、税務調査において隠蔽したものと指摘され重加算税の対象となる可能性があります。

 

一般的に相続税申告書を作成する場合には、死亡日現在の預金残高証明書を取得し、当記載金額を課税対象財産として申告されることが多いようです。

税務上において事例の場合に引出した現金は、その預金残高証明書記載金額には含まれていない手許に残っている財産という取扱いになります。

それ故に事例の資金は相続税申告書上、「(手許)現金」として計上する必要があります(なお、葬儀費用は債務控除として相続税の課税価格から差し引かれます。)。

また当資金を申告されない場合には、事前にその財産の存在を知っているという理由からその引出という行為は隠蔽によるものと判断され、重加算税の対象となるものと予想されます。

 

ところでこの事例の様な場合の対策として、元本補てん契約のある金銭信託を利用するという方法があります。

当信託を簡単に説明させていただきますと、相続発生時において予め指定した方に信託財産をお支払いするという契約です。

したがって予め当信託契約を締結しておけば、後に相続が発生した場合において受取人が金融機関に所定の書類を提出することで迅速にその信託金を受け取り、葬儀費用等の支払いに充てることが可能となります。

なおこの場合においても受取人が受け取る信託金は、相続税の課税対象となりますのでご注意下さい。

 

*文章の作成上、法制度詳細の説明を割愛している部分がございます。予めご了承下さい。なお実際に運用・履行される場合には、税理士等の専門家にご相談願います。